『ツーリスト 沈みゆく帝国のスパイ』

  • タイトル:ツーリスト 沈みゆく帝国のスパイ
  • 原題:The Tourist
  • 製作年:2009
  • 製作国:アメリ
  • 劇中年:2001-2007
  • 要素:ヴェネツィアアメリカ、CIA、911、親子、殺し屋
  • 評価:★★★★★
  • 寸評:現場を退いていたCIA諜報員<ツーリスト>のミロは、伝説の暗殺者の死を契機に胡乱な策謀に巻き込まれていく。20世紀のスパイフィクションの伝統を、ゼロ年代のリアリティのなかで復活させた一作。村上博基のいぶし銀な訳文とあいまって地味な一作と思えるが、911前日から始まり、随所にあからさまな過去作からの引用がみられるなど、タランティーノ以降のリミックス/サンプリング文化を呼吸したケレン味も隠されている。文学性・スパイ世界のリアリティ・娯楽性を兼ね備えた著者スタインハウアーは、ジョン・ル・カレを継ぐ21世紀のスパイ小説のトップランナーといえるだろう。

ツーリスト 沈みゆく帝国のスパイ (上) (ハヤカワ文庫NV)

ツーリスト 沈みゆく帝国のスパイ (上) (ハヤカワ文庫NV)

ツーリスト 沈みゆく帝国のスパイ (下) (ハヤカワ文庫NV)

ツーリスト 沈みゆく帝国のスパイ (下) (ハヤカワ文庫NV)