インデックス

 スパイフィクションについてまとめるために、本ブログ(http://d.hatena.ne.jp/tegi/)とは別に作成しました。
 スパイを扱った小説・映画・ゲーム等のフィクションのデータを蓄積し、最終的にはかつて早川書房が出版していた『冒険・スパイ小説ハンドブック』のアップデート版を目指します。

<随時更新>

 →今年リリースされた&される予定のスパイフィクションの新作を総まとめ。新刊やロードショーのチェックにお役立てください。

<索引へのリンク>

2015年のスパイフィクション・カレンダー

 最新作のチェックのため、小説・映画を中心としたスパイフィクションのリリース予定をまとめます。
 括弧内は、(ジャンル/製作者あるいはキーパーソン/リリース日)。
 最終更新日:2015/01/18

1月

2月

  • 『完璧な夏の日』(小説/ラヴィ・ティドハー/2月20日

  • Dead Lions(『窓際のスパイ』シリーズ第二作)(小説/ニック・ヘロン/詳細未定)

11月

12月

時期未定

『スパイ・レジェンド』

  • タイトル:スパイ・レジェンド
  • 原題:The November Man
  • ジャンル:映画
  • 監督:ロジャー・ドナルドソン
  • 製作年:2014
  • 製作国:アメリ
  • 劇中年:2014(劇中言及なし)
  • 要素:身代わり、師弟、抜け忍、CIA、ロシア、政治家、脅威の捏造、無人兵器、チェチェンベオグラード
  • 評価:★★★☆☆
  • あらすじ:スイスで余生を過ごす元CIAエージェントのピーター・デヴェロウ(ピアース・ブロスナン)の元に、かつての上官が現れる。ピーターと因縁浅からぬロシア副大統領の過去を知る関係者が次々に暗殺されているというのだ。副大統領の側近として潜入している旧友を救うためモスクワに向かうピーターだったが、そこではかつての弟子メイソン(ルーク・ブレイシー)がある暗殺の準備をしていた…。
  • 寸評:五代目ボンド俳優として知られるピアース・ブロスナンが久々に主演したスパイ映画は、チェチェン紛争を主軸にしたハード目なもので、東西双方に背中を向ける。イギリス紳士のボンドのイメージではなく、アイルランド出身のブロスナンの本来の立ち位置が発揮されていると言えるかもしれないが、演技としては残念ながらイギリスの元首相を演じる『ゴーストライター』のほうが活き活きしているのだった。/陰謀劇と同時に師弟のドラマ、更に虐げられた女性の復讐劇を同時進行させ、かなりの無理を生じつつもそれなりに楽しませてくれるのが職人監督ドナルドソンの面目躍如。それらに通底して見え隠れする「かつて救えなかった”子供”を救う戦い」というテーマが、破綻はあれど、ビターさと理想論の共存する佳作に仕立てている。/原作はビル・グレンジャーの『ノベンバー・マン』。
  • これもおすすめ:『われらのゲーム』『ゴーストライター』『バンク・ジョブ

(2015/02/11)

2014年のスパイフィクション・カレンダー

 最新作のチェックのため、小説・映画を中心としたスパイフィクションのリリース予定をまとめます。
 括弧内は、(ジャンル/製作者あるいはキーパーソン/リリース日)。
 最終更新日:2014/12/07

1月

2月

3月

4月

5月

  • X-MEN フューチャー&パスト』(映画/5月5日)
  • 『暗殺者の復讐』(小説/マーク・グリーニー/5月22日)

6月

  • 『ラストミッション』(映画/McG/6月21日)

7月

8月

  • ピルグリム 1 名前のない男たち』(小説/テリー・ヘイズ/8月22日)
  • 『テロ、ライブ』(映画/監督キム・ビョンウ、主演ハ・ジョンウ)

9月

10月

11月

  • 『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』(映画/監督パトリック・ヒューズ)
  • サボタージュ』(映画/監督デイヴィッド・エアー)
  • 『ポイント・ブランク 標的にされた男』(映画/監督チャン)
  • 『コール・オブ・デューティ アドバンスド・ウォーフェア』(ゲーム/スレッジハンマーゲームス開発)new!

12月

詳細未定

『土漠の花』

  • タイトル:土漠の花
  • 英題:Flower of the Desert
  • ジャンル:小説
  • 著者:月村了衛
  • 製作年:2014
  • 製作国:日本
  • 劇中年:2014(言及なし)
  • 要素:ソマリア自衛隊、石油、CIA
  • 評価:★★★☆☆
  • あらすじ:海賊対策のためソマリアに駐屯していた陸上自衛隊第一空挺団が、墜落したヘリの捜索活動中に現地氏族の襲撃を受ける。虐殺にあったという女性を保護した直後のことだった。彼女は誰に追われているのか?何の援護もない砂漠で、隊員たちは生き延びることができるのか?安全地帯を目指し、生存者たちの決死の逃避行が始まった。
  • 寸評:開幕早々あっという間に開始される状況に、戸惑いながらも決死の選択と行動を繰り返していく主人公たち――圧倒的なテンポの良さと濃密なアクションが、映画やゲームに比肩する面白さを与えてくれる。あくまで生存を第一としたアクション活劇として終結するため、事件の背景の扱いは簡素だが(なので「スパイフィクション」として紹介するのは気が引けるが)、そのぶん現代冒険小説の入門としては手頃かもしれない。
  • これもおすすめ:『暗殺者の鎮魂』『ブラックホーク・ダウン』『ジェノサイド』

『誰よりも狙われた男』

  • タイトル:誰よりも狙われた男
  • 原題:A Most Wanted Man
  • ジャンル:映画
  • 監督:アントン・コービン
  • 製作年:2014
  • 製作国:アメリカ・イギリス・ドイツ
  • 劇中年:2014年(劇中言及なし)
  • 要素:親子、ハンブルクチェチェン、移民、ロシア、イスラム、BfV、金融、CIA
  • 評価:★★★★☆
  • あらすじ:ドイツ、ハンブルグ――西欧と中東、東欧が出会う街、そして、かつて911実行犯たちが潜伏した街。各国の情報機関が暗躍するスパイたちのホットスポットたるその街に、一人の若きチェチェン人イッサが流れ着く。熟練のスパイマスター・バッハマンはドイツGfBのチームを率いイッサを追うが…。ジョン・ル・カレの同名小説の映画化。主演のフィリップ・シーモア・ホフマンの遺作としても話題となった。
  • 寸評:充実した映画化の続くル・カレ作品だが、本作はル・カレの作風をもっとも素直に映画へ落とし込んだものと言えるのではないか。徐々に徐々に物語の核心へと引きずり込んでいく慎重かつパワフルな筆致、必要最低限にしか描かれない政治的背景、しかしストレートに打ち出される鮮烈なメッセージ。/映画の最後に発生するアクシデントは、スパイフィクションのなかではお馴染みのものだし、多くのフィクションのなかでは、物語の背景や途上に起こるささやかなものだ。しかし、それがいかに非道で、人々を蹂躙し、スパイたち本人をも踏みにじることなのか、が身にしみてわかる。英語で作られた娯楽映画ではあるが、ハリウッドのスパイフィクションに痛撃を食らわせる、パワフルなカウンターパンチだ。/話題となったホフマンの演技、また彼の脇を固める助演陣たちの演技もともにすばらしい。バッハマンの率いる「チームもの」としても魅力的であり、この不条理な結末にはいっそ『フレンチ・コネクション2』のような、正義の逆襲を描く続編を作ってほしいとすら思えるのだが、それが決して叶わないことであるのがまことに哀しい。(2014/12/07)
  • これもおすすめ:『ゼロ・ダーク・サーティー』『裏切りのサーカス』『ミッション・ソング』

『アトミック・ボックス』

  • タイトル:アトミック・ボックス
  • 原題:Atomic Box
  • ジャンル:小説
  • 著者:池澤夏樹
  • 製作年:2014
  • 製作国:日本
  • 劇中年:2013
  • 要素:親子、核兵器、日本、警察、女、アメリカ、北朝鮮マンハント
  • 評価:★★★★☆
  • あらすじ:若き社会学者美汐は、父親から死の直前に一枚のCD-ROMを託される。困惑する彼女のまえに現れる公安警察たち。瀬戸内海の小島に暮らす平凡な漁師だったはずの父が、かつて核兵器開発に関わっていた――。父の過去を清算するため、彼女は東京へと向かう。
  • 寸評:池澤夏樹といえば純文学畑のイメージが強いが、ル・カレと北欧ミステリを愛読するというだけあって、スパイフィクション的ケレンも、どんでん返しの衝撃もお手の物。そのうえ、テーマが「日本による核兵器開発」である。これが面白くないわけないじゃないか!/美汐が、島生まれの感覚や社会学者としての人脈を使って軽やかに警察を出し抜いていく逃走劇はどこか牧歌的で愉快だ。大風呂敷を丁寧に畳みつつ、深刻ぶった告発や問題提起に堕さず、最終的に個人の幸福へと着地していくところも実にスマートでやさしい。同じ年・同じテーマの『残響のテロル』とあわせて楽しむことで、両者の違いに思いを馳せるというのもおすすめ。
  • これもおすすめ:『残響のテロル』『カデナ』『われらが背きし者