『イコライザー』
- タイトル:イコライザー
- 原題:The Equalizer
- ジャンル:映画
- 監督:アントワン・フークア
- 製作年:2014
- 製作国:アメリカ
- 劇中年:2014(言及なし)
- 要素:CIA、ロシアンマフィア、引退
- 評価:★★★☆☆
- あらすじ:ボストンに暮らす初老の男マッコール(デンゼル・ワシントン)。昼はホームセンターで働くお人好し、夜は不眠症の身を持て余してダイナーに居座る読書人…。しかしそれは彼が必死に作り上げた仮の姿だった。顔見知りの娼婦テリー(クロエ・グレース・モレッツ)の受けた不条理な暴力を知り、彼はついに元CIAの凄腕工作員としての能力を解放する…!
- 寸評:過去について具体的な説明は一切なしで、老工作員の背負う業の重さを描き切ったデンゼル・ワシントンとアントワン・フークアの演出がみごと。殺人スキルだけでなく、状況把握・決断・行動を常に行っていく主人公の知力も的確に描かれ、スパイフィクションとしてのカッコよさも存分に楽しめる。概ね同じコンセプトであるリーアム・ニーソンの『96時間』と比べて長く鈍重である点は否めないが、この手の映画(ギンティ小林言うところの「ナメてた奴が殺人マシン」映画)が好きな人間ならまったく苦にならないだろう。デンゼル・ワシントンのフィルモグラフィーでいえば、『マイ・ボディガード』との類似を楽しめるのはもちろん、近作『デンジャラス・ラン』で演じた狂気の凄腕工作員の引退後という想像も膨らむ。(2014/11/3)
- これもおすすめ:『マイ・ボディガード』『デンジャラス・ラン』『96時間』
『メタルギアソリッドV グラウンド・ゼロズ』
- タイトル:メタルギアソリッドV グラウンド・ゼロズ
- 原題:Metal Gear Solid V :Ground Zeroes
- ジャンル:ゲーム
- 監督:小島秀夫
- 製作年:2014
- 製作国:日本
- 劇中年:1975
- 要素:傭兵、PMC、核兵器、グアンタナモ、爆弾、拷問
- 評価:★★★☆☆
- あらすじ:前作『ピース・ウォーカー』から一年。かつて共に戦った少女チコ、少年兵パスの二人がアメリカ軍に監禁されていることを知った歴戦の勇士スネークは、キューバ・グアンタナモへと単独潜入を試みる。1984年の物語を描く新作『ファントム・ペイン』のプロローグ。
- 寸評:傭兵たちの理想郷「国境なき軍隊」が強大になるいっぽう、裏切りと陰謀によって足を掬われつつあるスネークの姿が、キューバの夜の湿度と空気をセクシーに描く圧倒的なゲーム表現をもって描かれる。プロローグゆえ物語のボリュームは小さいが、このゲームが描く1975年の世界に感じるリッチな感覚は、ハリウッド映画のそれをも上回るかもしれない。映画好きな小島監督だけあって、J・J・エイブラムス的ハレーション、『ドライヴ』な80'sふう劇伴など、2014年の映像作品としての楽しさも豊富。「1975年の世界でスパイをしちゃう俺」にうっとりしたい御仁ならば、当分のあいだは本編『ファントム・ペイン』を待たなければならないフラストレーションを背負ってでも、プレイして損はない。
- これもおすすめ:『メタルギアソリッドV ファントム・ペイン』『メタルギアソリッド ピース・ウォーカー』
『残響のテロル』
- タイトル:残響のテロル
- 原題:Terror in Resonance
- ジャンル:TVアニメ
- 監督:渡辺信一郎
- 製作年:2014
- 製作国:日本
- 劇中年:2014(言及なし)
- 要素:テロ、核兵器、爆弾、ハッキング、アメリカ、FBI、警察、日本、青春
- 評価:★★★★★
- あらすじ:冬の東北。再処理施設からプルトニウムが強奪される。半年後、夏の東京で、「スピンクス」と名乗る少年ふたりが都庁を皮切りに連続爆破テロを行っていく。学校にも家庭にも居場所のない少女リサは彼らに惹かれていくが――。
- 寸評:2014年現在の日本でしか作れない、類まれなるサスペンス。核と教育という切迫したテーマを、日本のTVアニメならではの娯楽性とリアリズムと優しさをもって描ききった。個々のテロをめぐるサスペンス演出は毎回見応えがあり、十代の少年たちが警察を翻弄していく俺スパイ感の高さも楽しい。スパイフィクション/ポリティカルフィクションのもつ寓話性を活かしつつも、必要以上にファンタジーにせず、あくまでクールにテロ計画を完遂させる点も清々しい。日本のスパイフィクション史上に残る大傑作だ。多くの人に観てほしい。(長文論考:「愚かさとテロリズム『残響のテロル』」「『残響のテロル』覚書」
- これもおすすめ:『ザ・イースト』『アトミック・ボックス』『攻殻機動隊 Stand Alone Complex』
『カーラのゲーム』
- タイトル:カーラのゲーム
- 原題:Kara's Game
- ジャンル:小説
- 著者:ゴードン・スティーヴンズ
- 製作年:1996
- 製作国:2000
- 劇中年:
- 要素:SAS、ボスニア、シュタージ、イスラム、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争
- 評価:★★★★☆
- あらすじ:ハイジャックされたルフトハンザ航空3216便がロンドン上空へ向かう。ヒースロー空港で待機するSASチーム。リーダーのカーラとSAS隊員フィンは、かつてボスニア内戦のさなか互いを助け合った過去を持っていた――。
- 寸評:母親で恋人で戦士で策士で指導者で娼婦、という冒険小説で読者が求めがちな女性イメージ全点盛りなカーラの造形にノれるかどうかが本作の評価を分ける。その意味では、最大の読みどころとなるのは現在の事件を描く後半ではなく、彼女が不幸の底へ落ち、這い上がっていくボスニアでの過去を描く前半だ。後半の展開には物足りなさもあるが、たとえば現在のウクライナ情勢のように、凄惨な紛争が発生し、国際社会がその対処に迷うという状況が続く限り、本作は「現役」の小説として読み継がれるだろう。(2014/07/20)
- これもおすすめ:『戦争広告代理店』『ラット・トラップ』
- 作者: ゴードンスティーヴンズ,Gordon Stevens,藤倉秀彦
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2000/01
- メディア: 文庫
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『脱出航路』
- タイトル:脱出航路
- 原題:Storm Warning
- ジャンル:小説
- 著者:ジャック・ヒギンズ
- 製作年:1976
- 製作国:イギリス
- 劇中年:1944
- 要素:帆船、ブラジル、大西洋、イギリス、Uボート
- 評価:★★★☆☆
- あらすじ:1944年の夏、ブラジル。戦況の悪化を憂い祖国へ決死の帰還を企てたドイツ人たちが、古ぼけた帆船で大西洋横断をめざす。
- 寸評:老朽帆船が大西洋横断、という本筋は渋いが、並行して語られるイギリスでの物語は意外と派手だ。知的なUボート艦長に美人女医といった面々の適度な「わかりやすさ」が、この渋い作家の幅広い人気を支えていたのだろう。魅力的な人物たちの辛い冒険行が収斂していく後半には、わかってはいても熱くなれる。終幕の茫漠としたさびしさ、人間のはかなさが印象に残る。
- これもおすすめ:
『国王陛下のUボート』『鷲は舞い降りた』『ナチが愛した二重スパイ』
『ラット・トラップ』
- タイトル:ラット・トラップ
- 原題:Rat Trap
- ジャンル:小説
- 著者:クレイグ・トーマス
- 製作年:1976
- 製作国:1976
- 劇中年:1976
- 要素:空港、ハイジャック、アラブ過激派、逃亡犯、マンハント、ヒースロー
- 評価:★★★☆☆
- あらすじ:ヒースロー空港に着陸した民間旅客機がハイジャックされた。アラブ過激派の獄中犯ナスードの解放を目的とした凶行だ。イギリス内務省のハイジャック対策本部長ラティマーは冷静に事にあたろうとするが、空港へ連行中のナスードが行方不明になってしまう。『ファイアフォックス』で知られる作者のデビュー作。
- 寸評:ハイジャックとマンハントとに二面で展開するサスペンスが読ませる。群像劇的に距離をもって描かれる複数の人間たちは、やや冷たく描かれる。時折事態に耐え切れず投げやりになる彼らの姿を、冷酷にも温情にも流されず淡々と描けるのが、この人の作家性ということなのかもしれない。また、事件の陣頭指揮をとるラティマーが内務省の文官であることがおもしろい。彼は第二次大戦中に対独諜報作戦にも関わっており、わずかに語られる過去のエピソードも読ませる。彼が過去の経験から現在のハイジャック犯に見出す「動機」が、時代を越えて読者にスリルを与えるスパイスとなっている。
- これもおすすめ:『オスロ国際空港/ダブル・ハイジャック』『エグゼクティブ・デシジョン』『キャプテン・フィリップス』
『レインボー・シックス』
- タイトル:レインボー・シックス
- 原題:Rainbow Six
- ジャンル:小説
- 著者:トム・クランシー
- 製作年:1998
- 製作国:アメリカ
- 劇中年:
- 要素:ヘリフォード、アメリカ、ベルン、ウィーン、スペイン、シドニー、エコテロリスト、IRA、KGB
- 評価:★★☆☆☆
- あらすじ:国境・地域を越え拡散するテロの驚異に対抗すべく、CIAのジョン・クラークを中心に各国情報機関・特殊部隊の精鋭を集めた秘密チーム「レインボー・シックス」が結成される。次々と各地の事件を解決していくクラークたちだったが、その活躍のいっぽうで彼らの想像もおよばない陰謀が進行していた。
- 寸評:トム・クランシーの関わった同名大ヒットゲームで知られる「レインボーシックス」の活躍を描く。なお、ゲームと小説は設定が共通しているものの物語は別もの。文庫本四巻のボリュームを感じさせないリーダビリティはみごとだが、全体の構成や倫理の浅薄さはトム・クランシーのパブリックイメージを裏切らない。複数並行して語られるストーリーのうち、元KGBポポフの部分は、元スパイが自身の資質と人脈を活かしスマートに暗躍するスパイ譚として読み応えあり。
- これもおすすめ:『ザ・イースト』『コール・オブ・デューティ モダン・ウォーフェア』