『誰よりも狙われた男』

  • タイトル:誰よりも狙われた男
  • 原題:A Most Wanted Man
  • ジャンル:映画
  • 監督:アントン・コービン
  • 製作年:2014
  • 製作国:アメリカ・イギリス・ドイツ
  • 劇中年:2014年(劇中言及なし)
  • 要素:親子、ハンブルクチェチェン、移民、ロシア、イスラム、BfV、金融、CIA
  • 評価:★★★★☆
  • あらすじ:ドイツ、ハンブルグ――西欧と中東、東欧が出会う街、そして、かつて911実行犯たちが潜伏した街。各国の情報機関が暗躍するスパイたちのホットスポットたるその街に、一人の若きチェチェン人イッサが流れ着く。熟練のスパイマスター・バッハマンはドイツGfBのチームを率いイッサを追うが…。ジョン・ル・カレの同名小説の映画化。主演のフィリップ・シーモア・ホフマンの遺作としても話題となった。
  • 寸評:充実した映画化の続くル・カレ作品だが、本作はル・カレの作風をもっとも素直に映画へ落とし込んだものと言えるのではないか。徐々に徐々に物語の核心へと引きずり込んでいく慎重かつパワフルな筆致、必要最低限にしか描かれない政治的背景、しかしストレートに打ち出される鮮烈なメッセージ。/映画の最後に発生するアクシデントは、スパイフィクションのなかではお馴染みのものだし、多くのフィクションのなかでは、物語の背景や途上に起こるささやかなものだ。しかし、それがいかに非道で、人々を蹂躙し、スパイたち本人をも踏みにじることなのか、が身にしみてわかる。英語で作られた娯楽映画ではあるが、ハリウッドのスパイフィクションに痛撃を食らわせる、パワフルなカウンターパンチだ。/話題となったホフマンの演技、また彼の脇を固める助演陣たちの演技もともにすばらしい。バッハマンの率いる「チームもの」としても魅力的であり、この不条理な結末にはいっそ『フレンチ・コネクション2』のような、正義の逆襲を描く続編を作ってほしいとすら思えるのだが、それが決して叶わないことであるのがまことに哀しい。(2014/12/07)
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