『ツーリストの帰還』

  • タイトル:ツーリストの帰還
  • 原題:The Nearest Exit
  • ジャンル:小説
  • 著者:オレン・スタインハウアー
  • 製作年:2010
  • 製作国:アメリ
  • 劇中年:2007-2008
  • 要素:CIA、夫婦、親子、暗殺、人身売買、中国、国安部、子供、ドイツ、BND、移民、スーダン
  • 評価:★★★★★
  • 寸評:『ツーリスト 沈みゆく帝国のスパイ』の続編。嫌疑を晴らし諜報の現場に復帰した、CIAの工作員<ツーリスト>ミロ。組織への忠誠を試すように、ドイツに暮らす少女の暗殺指令が下される。娘を持つ身であるミロは苦悩するが、その任務を発端に複雑怪奇な陰謀がたちあらわれていくのだった。緻密に張り巡らされた陰謀の設計も見事だが、ある一点からその陰謀の意味ががらりと変わり、論理ではなく怨念をもって疾走していくクライマックスがすさまじい。また、家庭を守るために仕事に没頭するが、かえって家族からは非難される――そんな苦しみを味わったことのある人ならば、苦悩しながら愛しあおうとするミロ夫妻に共感し、がんばれと声をかけたくなること必至。ポスト911、CIA受難の時代を総決算するような展開を取りつつも、時代を問わず心を捉えるドラマでもあり、もはや傑作中の傑作というほかない。

(2014/01/19)

ツーリストの帰還(上) (ハヤカワ文庫NV)

ツーリストの帰還(上) (ハヤカワ文庫NV)

ツーリストの帰還(下) (ハヤカワ文庫NV)

ツーリストの帰還(下) (ハヤカワ文庫NV)